オンライン相談員の募集・育成・ケアはどうする?無料相談サイトを10年以上運営して分かったこと

「相談員を、どうやって集めればいいんだろう。」
オンライン相談を立ち上げようとする団体が、システムの次に必ずぶつかるのが、この「人」の問題です。
相談を受けるのは、システムではなく人です。どんなに良い仕組みを作っても、相談を受ける相談員がいなければ始まりませんし、その相談員が疲れて辞めてしまえば、サービスは続きません。
私たちつくりばは、無料相談サイト「ココトモ」で、これまでに2,000名以上のボランティア相談員とともに、累計15万件以上の相談を受けてきました。その10年以上の運営で、いちばん難しく、いちばん大切だと感じているのが、この相談員の募集・育成・ケアです。
相談員の募集・育成・ケアは、どれか1つでも欠ければ成り立ちません。そのため、この記事では、相談員の募集・育成・ケアという一連の流れを下記の6ステップでお伝えします。
- 相談員の募集前準備
- 相談員の募集
- 相談員の採用
- 相談員の育成
- 相談員のケア
- 相談員の定着
なお、この記事が扱う「相談員」とは、主に、傾聴を軸にオンラインで相談を受けるボランティア相談員を指します。オンライン想定ではありますが、対面の相談員にも当てはまる内容になります。ただし、専門家による有償相談や、有償スタッフの採用では、必要な資格・雇用条件・監督体制が変わってきますので、その点はあらかじめご了承ください。
※相談員を支える「機能」については、別記事「チャット相談システムに必要な機能」で詳しく扱っています。本記事は、相談員体制をどうつくり、どう支えていくかの話になります。
① 相談員の募集前準備:「役割と責任の範囲」を決める
相談員の募集を開始する前に、最初に決めておきたいことがあります。それは、相談員に何を期待し、何をどこまで任せるのか——役割と責任の範囲です。ここが曖昧なまま募集すると、「思っていた活動と違う」というミスマッチや、相談員が抱え込みすぎる事故につながります。
具体的には、募集を始める前に、次のようなことを言葉にしておきます。
- 相談員に、どんな相談を、どんな立場で受けてもらうのか
- 反対に、何は「やらない」と決めるのか(専門的な判断など)
- どこから先は、運営や専門職へ引き継ぐのか
- 必要な条件(年齢や同意など)は何か
ココトモがまず決めているのは、「専門家として解決を目的に相談にのるのではなく、友達として話を聞くことを目的に相談にのる」という線引きです。相談員が行うのは傾聴・共感・受け止めであって、診断・治療はおこなわないし、法律など専門家の判断が必要な範囲には対応しない——これを募集ページにもマニュアルにも、繰り返し明記しています。
また、相談員はいつでも運営にヘルプを求めることができたり、自殺関連・虐待関連などの深刻な相談は専用チームが対応すると決めていたりします。「友達として」という役割をはっきりさせているからこそ、次に紹介する『資格は不要です』などの案内も、安心してお伝えできるのです。
なお、ここでいう「友達として」は、個人的な連絡先を交換したり、私的な関係を結んだりするという意味ではありません。診断や指示をする専門家ではなく、対等な立場で、同じ目線から話を聴くという役割を表しています。
② 相談員の募集:知ってもらい、応募の不安を下げる
相談員の役割が決まったら、いよいよ募集です。ここでやることは大きく2つ。どうやって知ってもらうかと、応募の不安をどう下げるかです。
どうやって知ってもらうか
まず「知ってもらう」。ココトモの場合、複数の経路からココトモのことを知れるようにしています。自然検索、YouTube・X・InstagramなどのSNS、Google広告、ボランティア募集ポータルサイト、提携している支援団体、そして既存の相談員からの紹介——と、複数の経路があります。大切なのは、ただ広く告知することではなく、どの入口から来た人が、長く続く相談員になってくれるのかを確かめながら告知方法を改善していくことです(この「続いているか」を見る話は、最後の「定着」パートで詳しくお伝えします)。
中でも、ココトモが大切にしているのは、少し特別な入口です。
ココトモでは、相談者として利用して励まされた方が、いずれ相談員になって誰かを励ます側になる。そんな「思いやりの連鎖」が生まれる場所を目指しています。そのため、相談サービスを利用してくれた方への案内や、サイトのいたるところに「あなたの経験を、今度は誰かのために活かしませんか」というメッセージを置いています。実際に、相談者として利用してくれた方が相談員になった場合の対応は素晴らしく、また定着率も高い傾向があります。
この「相談者がいずれ相談員になる」流れは、偶然ではなく設計で生まれます。サイトのどこに募集を置き、登録のときに何を尋ね、どの段階で声をかけるか——その積み重ねで、再現できる部分です。
応募の不安をどう下げるか
次に「不安を下げる」。相談員に応募する方の多くは、「自分にできるだろうか」という不安を抱えています。この不安のハードルを下げるために必要な情報を伝えられないと、関心があっても応募まで進んでもらえません。
ポイントは、沸くであろう疑問や不安をすべて洗い出し、それらを埋めるための情報や環境を整えることです。たとえば一例を挙げると以下のような疑問や不安が沸くだろうと想像できます。
- 資格や経験は必要か(必要な場合、どのような内容か)
- ノルマはあるのか(ある場合、どのような内容か)
- 研修やサポートは整っているのか(ある場合、どのような内容か)
- 万が一相談者とトラブルになった場合、責任はどうなるのか
- 虐待や自殺未遂を見かけた際のサポートや通報フロー等は整備されているのか
- テキスト/Zoom/対面、どのような相談形式か
- 相談員の個人情報はどこまで提出する必要があるのか
- 相談員全体の人数、年代、性別、など
- 相談全体の件数、年代、性別、カテゴリー、など
- 自分が対応する相談は割り当てられるのか、自分で選べるのか
- ボランティア証明書や活動証明書は発行してもらえるのか
ここに記載した内容は本当に一例で、ココトモで実際に考えた際にはこの10倍ぐらい量の疑問や不安が挙がりました。そして、1つ1つ不安を解消するための情報や環境を整えていきました。
応募前に沸くであろう不安を解消する情報を整えることは大切ですが、同時に、できないことや慎重に検討してほしいことをきちんと伝えることも大切です。ココトモの場合だと、相談者がいずれ相談員になることは推奨していますが、「心身に余裕がない状態での応募はおすすめしていない」「精神疾患で通院されている方は応募に主治医の許可が必要」などの条件を設けています。相談員としての活動はやりがいがある反面、負担がかかるケースもあるため、無理なく長く活動を続けられる方が応募できるような案内を心掛けています。
なお、未成年の方を相談員として迎える場合は、特別な配慮が要ります。ココトモでは未成年(高校生以上)の方も受け入れしているため、親権者の同意を必須にしたうえで、深刻な相談は本人に抱えさせず運営が引き継ぐ、学業や健康を活動より優先する、といった枠組みを設けています。
③ 相談員の採用:審査基準は妥協せず、フォローをおこなう
相談を受ける以上、採用の審査基準は妥協できません。良かれと思った一言が、相談者を傷つけてしまうこともあります。ココトモの場合は傾聴を軸とした相談対応をおこなうため、「相談者の気持ちを受容・共感できるか」をきちんと見極めるようにしています。また、採用は応募者の参加是非を決める重要な作業になるため、誰でも同じ判断ができるように細かく言語化された審査マニュアルを用意して、属人的な採用にならないよう気を付けています。
しっかりした審査マニュアルを作っておくことで、合格に至らなかった方へ「具体的にどの基準に至らなかったのか」を説明することもできます。ココトモの場合は一度まで再応募できるようにしているため、合格に至らなかった方には、不足していた点の詳細と、それを解消するための補習まで案内するようにしています。
ココトモの応募では、実際の相談に近い「サンプル相談への返信内容」を主な審査対象としています。傾聴を軸にした審査項目や、これまでに対応した15万件以上の相談データと相談者の満足度データを活用して、相談者が安心する対応に共通する要素を審査項目に取り入れています。
繰り返しになりますが、いちばん大切にしているのは、基準に届かなかった場合も、そこで終わりにしないことです。足りなかった点の詳細と補習を案内し、もう一度挑戦できるようにしています。「ふるい落とす選考」ではなく、「育てる前提の選考」にしたいという想いがあるためです。
選考というと厳しさだけが思い浮かびますが、大切なのは質を守りながら、応募してくれた人の意欲を無駄にしないことです。不合格でも再挑戦の道を残す——その先の学び直し(補習)は、次の「育成」とひとつながりです。
④ 相談員の育成:未経験でも「段階を追って」学べる
資格不要で迎える以上、育成の仕組みは欠かせません。とくにオンラインのテキスト相談では、「聴く」技術——傾聴を、体系立てて学べるようにしておくことが大切です。ココトモでは、活動を始める前から始めたあとまで、段階を追って学べるようにしています。
- 活動の前に:
相談対応の基本を学ぶ「研修動画」「相談マニュアル」を見てもらう。 - 応募の課題そのものが練習に:
応募時の「サンプル相談への回答」は、選考であると同時に、最初の実地練習になっている。 - 活動を始めた直後に:
最初の相談でおくる初回メッセージや、相談のやり取り全体にたいして運営からフィードバックが届く。 - 活動開始後はいつでも:
相談マニュアルや相談員限定の講座動画で学び直せる。また、メンバーから質問が届くたびに相談マニュアルに情報が追加されていく。
ココトモでは、相談員に向けて臨床心理士の方に開催いただいた講座の動画を複数公開しています。共感・受容・自己一致といった傾聴の講座にはじまり、精神疾患の基礎知識やセルフケアの講座まで、未経験の相談員に必要な情報を揃えています。
また、相談マニュアルには、これまで相談員たちが実際に躓いてきた困りごとをベースにした参考情報を多数掲載しています。相談事例と解説、初回返答のポイント、質問のポイント、対応が難しい相談者への接し方、など、相談員たちが困ったときに参照できるマニュアルを日々追加しています。
なかでも大切にしているのは、育成の段階から「燃え尽きないための心構えや仕組み」を共有していくことです。相談員がヘルプを出しやすい仕組みを作り、そのうえで「一人で抱え込まないこと」や「相談にのる人ほど誰かに相談すること」の大切さを伝え続けるようにしています。
⑤ 相談員のケア:相談員を燃え尽きさせない——一人にしない仕組み
ここが、相談サービスで見落とされがちで、もっとも大切なところです。つらい相談を受け続ければ、相談員はどうしても消耗します。相談員が一人で抱え込まない仕組み、いつでも頼りやすい仕組みこそが、サービスを長く続ける生命線です。
ココトモでは、相談員が運営スタッフに1対1で相談できる専用の窓口(メンバー相談室)があります。活動に関する悩みだけでなく、プライベートの悩みでも相談できます。また、相談員同士が悩みを相談できる専用の掲示板(メンバー限定)に加え、相談員同士が日常的にテキストや通話で交流できる専用SNSも用意しています。
相談活動に関していえば、深刻な相談を一人で抱えそうなときは、深刻な相談を受ける専用チームへ「バトンタッチ」することができます。このように、相談員が孤立しないための受け皿をいくつも重ねています。
もうひとつ大切なことが、休みやすい環境をつくることです。ココトモはノルマが無いので休みやすい側面はありますが、さらに、指名相談の受付ON/OFFを自分で設定することができたり、一定期間活動していない人は自動的にココトモからの配信案内をオフにしたり(※重要なものは除く)と、物理的に離れることができるようにも設計しています。責任感が強い人たちが多いからこそ、無理をさせない。これも立派なケアです。
このほか、活動を始めたばかりの相談員には運営からフィードバックを返したり、AIが返信を送る前のセルフチェックを手伝ったりと、人とAIの両面で支えています(画面には必ず「AIはあくまで参考」と添えています。機能の詳細は別記事「チャット相談システムに必要な機能」へ)。AIはあくまで、人の判断を支える補助です。
ここまでに記載した内容から分かるとおり、こうした「一人にしない仕組み」は、運営の頑張りだけでは回りません。システム、人、運用マニュアル、すべてが一体になって、はじめて回ります。私たちつくりばも、ココトモでの運営をおこないながら、日々、相談員を支える仕組みを積み重ねています。
⑥ 定着:活動状況を定期的に確認して改善する
相談員は、合格して活動を始めてからが本当のスタートです。だからこそ、採用を「集めた人数」で終わらせず、その後も続いているか・対応の質は保たれているかまで見て、募集や育成の改善に活かすことが大切です。
また、どのような環境整備をおこなえば相談員は活動したいと思うのか、そういったことを日々考え、さまざまな施策をおこない、1つ1つ効果を測定するように心がけています。
ココトモでは、合格した相談員が、その後も活動を続けているか。担当した相談の満足度はどうか——そこまで含めて見ながら、「どの入口から来た人が、質を保って長く続けてくれるのか」を確かめ、募集や育成の改善に活かすようにしています。集めて終わりにせず、続く・質が保たれる運営にしていく。地道ですが、ここが信頼の土台になります。
※相談者の満足度は大切な指標の一つですが、それだけで質を判断せず、実際の対応内容や返答率など、さまざまな情報を合わせて見ています。
なお、相談員の定着を測り、改善につなげるには、継続的にデータを集計する機能と運用体制が必要です。たとえば、合格から3か月経過した時点での「平均相談対応数」「相談対応数の分布」を調べたり、新しい施策の開始前後の期間比較をおこなったり、募集経路ごとの活動継続状況を比較したりする。こういった機能があり、さらに、定期的に分析をおこなう運用体制が整っていてはじめて改善していくことができます。
まとめ:相談サービスの生命線は、相談員
相談員の募集・育成・ケアは、どれか一つを頑張れば足りるものではなく、ひとつながりです。募集の前に役割を決め、応募のための不安を減らし、寄り添えるかを見極めつつ、基準に届かなかった人にも学び直せる機会を用意し、段階的な育成をおこない、活動中は一人にせず、続いているかまで見届ける。相談を受けるのは人であり、その人が安心して続けられるかどうかにサービスの寿命がかかっています。
私たちつくりばは、ココトモで2,000名以上の相談員とともに歩んできた経験をもとに、相談員を支える運営の仕組みづくりからシステム開発までご一緒できます。募集ページや応募の流れ、相談マニュアル、メンバー相談室のような「相談員を支える仕組み」の設計から、その土台になるサイト・システムの開発まで——「人をどう集め、どう支えればいいか分からない」という段階からでも大丈夫です。もし具体的に相談したいことがある場合は、お気軽に無料相談からご相談ください。
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